勤務医の労働時間の実態。過酷な労働環境とは?

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高齢化が進む中、私たちが安心して暮らしていくには、土台に医療の存在が必要であるのは感じずにはいられません。

そのような社会の中で医師不足が叫ばれており、政府が掲げる「働き方改革」においても医師不足に影響を受けている医師の働き方に対して様々な提言をされています。

 

ここでは勤務医の勤務実態についてお伝えしたいと思います。

1.勤務医の労働時間の実態

平成29年9月20日、日本医師会は女性勤務医の現状に関するアンケート結果を報告しました。このアンケートは、全国の病院に勤務している女性医師を対象としたもので、どのような勤務実態となっているかを把握するために行ったものです。このアンケートにより過酷な労働時間が浮き彫りとなりました。

時間外労働において「過労死ライン」と呼ばれる80時間を超えて勤務している女性医の割合は、25%に達することが分かりました。さらに、100時間を超える割合は13%を占めています。

1週40時間勤務をしている割合は、40%にも満たず、多くの勤務医が時間外労働に当たっています。「仕事を続けるうえで必要と思う制度や支援策」との問いかけに対して、回答者の96%が「勤務環境の改善」であると答えています。

このアンケートは女性勤務医に対するものですが、勤務医全体の過酷な労働環境の実態を物語るものではないでしょうか。

2016年には香川県立病院において、年間2200時間を超える時間外労働をしている医師があると大きな話題になりましたし、2017年には岐阜の市民病院が過労死ラインを超える残業があったとして岐阜労働基準監督署が是正勧告を出したと報道されています。これらの報道が氷山の一角であることは容易に予想することができるでしょう。

2.過労死ラインを超える勤務がなぜ起こるのか

労働基準上においては、2か月から6か月にわたって平均の時間外労働時間が80時間を超えている場合やおおむね100時間を超えている場合であれば、「過労死ライン」と認定します。

実際、労働時間が長くなると心疾患や脳血管疾患のリスクが高くなる報告があり、その根拠に基づいた判断基準となっています。しかし実態を見てみると、時間外労働は当たり前となっています。

医師の時間外労働が社会問題となっている中で、なぜこのような勤務実態が起こるのでしょうか。

2-1.一般労働者の場合

労働者であれば、休憩時間を除いて1週40時間を超えて労働させてはいけない規則となっています。また1日8時間を超える勤務をする場合には、1時間の休憩を与えることが必要で、最低でも毎週1日の休日もしくは4週に4日の休日を与えねばなりません。

2-2.医師の場合

医師の勤務は変則的になることが多く、急患の対応など勤務時間を超えて労働する機会がどうしても多くなってしまいます。そのような場合においては、行政官庁に届け出ることによって、法定の労働時間を超えて勤務することを認められています。

時間外労働協定と呼ばれるもので、労働基準法第36条に定められていることから「36(サブロク)」協定と一般的に呼ばれています。

2-3.36協定の問題点とは?

36協定が適用されるといえども、法定時間外労働時間の限度が存在し、1週15時間、4週43時間、年間360時間が限度となっています。

それでも月間80時間を超える勤務実態が存在する理由には、「特別条項」付き36協定となっている病院がほとんどであるからです。労働契約時に特別条項を付けておくことで、年6回までは法定時間を超えた時間外労働が可能となるのです。

2018年2月20日に全国医師ユニオンにおいて発表された「勤務医労働実態調査」では、1か月の平均時間外労働時間が発表されており、救急では94時間、産婦人科では83時間と過酷な実態が報告されており、36協定の問題点が浮き彫りとなっています。

全国医師ユニオン 勤務医労働実態調査 2018年2月20日

3.勤務医の当直の実態とは

病院の勤務医の時間外労働の背景として、「当直勤務」が大きく影響していることが分かります。当直勤務は診療時間外に勤務することで、24時間体制の病院に勤務している場合では、医師は交代勤務によって対応しなければなりません。

この当直については、看護師が行う「夜勤」と混同してしまうことが多いのですが、労働基準としては全く違うものになります。

3-1.夜勤と当直の違いとは?

夜勤とは、日勤と同様に1週40時間の労働として考えられるもので、例えば17時から9時まで夜勤をすると16時間勤務となり、2日間勤務していたことになります。

これに対して医師の行う当直は、夜勤と全く違う性質のもので、労働基準法としては「宿日直業務」に当たっています。

厚生労働省の通達には、この宿日直業務について「夜間休日において、電話対応、火災予防などの巡視、非常事態が発生した時の連絡など」であるとされています。

さらに病院において宿日直業務として医師が行う業務は、「常態としてほとんど労働する必要がない業務のみであり、病室の定時巡回や少数の要注意患者の検脈、検温等の経度または短時間の業務に限る」とされています。

また、「十分な睡眠の確保」「月1回を限度」「労働が頻繁にある場合には交代制勤務導入を検討」などとも指摘されています。

3-2.当直の睡眠時間と勤務実態

この厚生労働省の通達と実際の勤務実態を比べた時に、大きな開きがあることが分かると思います。

実態としての当直業務では、急患の対応をしなければなりません。大規模の病院に勤めていればなおさら、夜間対応の頻度は多くなるといえるでしょう。

さらに当直後は通常の勤務を行わねばなりません。本来の当直勤務であれば、十分な睡眠時間を与えられているはずですから、そのまま勤務をしてもまったく問題はありません。しかし急患の対応に追われている状態からの勤務である場合は、十分な睡眠時間をとれていないのです。

睡眠時間をしっかりと確保できていない場合では、当然ながら集中力や判断力が低下します。その中で命を預かる医師として勤務することが、いかに危険な行為であるのかは想像がつくでしょう。

4.勤務医の休日の実態とは

全国医師ユニオンが発表した勤務医労働実態調査によりますと、医師に対するアンケートの中で「労働条件改善策として重要と考えられるもの」の問いかけに対する回答で一番多かったものが、「完全な休日を増やす」ことで48.4%であることが分かっています。

労働基準法では、少なくとも週に1日、4週で4日以上の休日を与えることが必要であると定められています。しかしこのアンケートからは、医師が完全な休日を取得できていない実態が見えてきます。

休日が取れない背景には、「当直回数の多さ」「医師不足」が背景にあるといえます。

当直については、先ほども申しましたが、時間外労働として扱われることはなく、勤務時間にカウントされることもありません。また労働基準法では月1回を限度としていますが、数回の当直を義務付けされている病院もあります。

当直を休日の夕方から入る場合では、その日の休みは「完全な休日」ではなくなります。実態としては、勤務していることと同様になってしまいます。仮に月4日の休日である場合で、月3回当直に入っているとしたら、実質完全な休日は1日だけとなってしまうのです。

2007年には女性研修医が年間77回の当直に入り、過労死したとして大きな話題となりました。

それだけ医師の休日は少ないという実態が見えてくるのではないでしょうか。もちろん医師が十分配置されている場合であれば、そのような状況も改善されることでしょう。

5.まとめ

勤務医の労働時間の実態についてお伝えしました。

医師の労働環境の悪化が問題視される中で、政府の行う働き改革においても注目されている問題です。しかし日本医師会の会長は、労働基準法によって医師の働き方を規律してしまうことには実質反対の意見を持っています。

医師が安心して働けることが、国民生活の安心につながるものであるのは間違いありません。国はどこまで踏み込んだ改革を行えるのか、今後も注視する必要があります。

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